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ポップ×マァム 全年齢向け 小説 [プロポーズ]

何年か前に発行したコピー本からの再録です。
ずっと書いてみたかったポプマの小説で、最初で最後だから、これはやっぱプロポーズ話しかない!と思って作ったものです。
コピ本ですし、頒布数はかなり少なかったのですが、このお話は感想をいただけたりしたので、思い出深いです。
良かったら読んでみて下さいね。ポプマですが、ポップとダイの会話シーンが結構長いです。再掲載にあたって、2000文字くらい付け足しました。全体的に手直ししたのと、当時とラストが少し変わっています。ちょっと直すだけ、って思ったのに5時間も掛かってしまった。ガクブル。

当時は時間がなく、キリのいいページで収めたかったのもあって、甘さも控えめだったのでちょっと糖分足しました。うーん。良くなったのか悪くなったのか自分では判断できないのが辛いところです。
もしこちらで読みづらかったらpixivにも上げているのでそちらから読んでみてくださいね。それか、ブログの文字を変更しますので、何色が読みやすいとかあれば教えてもらえたら嬉しいです。

昨日の日記に拍手押してくれた方、ありがとうございました!


★あらすじ★大戦終了後、レオナのもとで復興に力を貸していたポップ。行方不明だったダイが地上に戻り、ようやく平穏が訪れた時、ダイに言われた事がきっかけでこれからの自分とマァムの関係をハッキリさせたいと思うようになる。そんな時、レオナからロモスへの出向命令が出て… という感じです。                    
大魔王バーンとの戦いが終わってから約二年。行方不明だったダイがようやく見つかった。
黒の核で受けた傷を癒し、自ら地上へと戻ってきたのだ。

ダイの帰還はパプニカより世界へと伝令が出され、勇者帰還を盛大に祝う宴が各国、各地で行われ、勇者パーティーの面々もパプニカに集まり、幸せな時間を過ごしていた。大魔王との壮絶な死闘もダイを探す苦しい日々も全ては終わったこと。笑って話せる、平和な世界がやっとダイたちに訪れた。
パプニカでの宴は一週間に渡って続き、国を挙げてのお祭り騒ぎとなっていた。
町では吟遊詩人が勇者ダイ一行の勇気と勝利を歌い、人々はそれに耳を傾け勇者の帰還と平和をかみしめた。

「ようやく終わったな」
テラスで風に当たっているレオナに、ポップが話しかけた。
「そうね。あの大戦から二年。私たちの戦いはまだ終わってなかった。ダイ君を見付けるまで、心が休まる日は無かったわ…。君もみんなもずっと探してくれていたものね」
「姫さんも、頑張ってたじゃねぇか。
でもそろそろ愛想つかして誰かと結婚でもしちまうんじゃないかとヒヤヒヤしてたけどな」
「失礼ね。そんなことあるわけ無いでしょ。あたしは人一倍諦めが悪いんだから。キミといい勝負よ、きっと」
「…さすがのおれも、姫さんには負けるかもなー」
ふふっと得意げに笑うレオナにポップも笑みを返す。
「…やっと、心から笑える日が来たのね…」
「ああ。…やっと。まったく、人をさんざん待たせやがってダイのやつ」
人々に囲まれ、困ったように笑うダイを遠目に見ながら、ポップは少し文句を言う。本当は嬉しくて仕方が無いのだが。
「ほんとよねぇ。でもこれからは、たっぷりかまってもらわなきゃ」
「…勉強もさせる気だろう?」
「良く分かったわね。さすがポップ君」
「アイツが嫌がって逃げ出さない程度に、お手柔らかに頼むぜ…姫さん」
「あら、そうね。気をつけなくちゃ」
少し前までには思いもしなかった幸せな時間が流れていた。
勇者を失った時から止っていた仲間達の時間が少しづつ動き出そうとしていた。


 楽しい宴も終わりを告げ、城下町の人々が日常の生活に戻った頃、集まっていた仲間達も少しづつ自分の居場所に戻り始めていた。
マァムがネイル村へと帰り、ヒュンケルは一人、旅に出た。ラーハルトは相変わらずダイの傍に控えている。メルルもテランへと戻った今、パプニカに残った仲間はダイとポップだけになっていた。本当はポップも一度故郷へ戻る話が出ていたが、ダイの事もいろいろと心配だったので、残る事にしたようだった。
もっとも、パプニカ王国は大戦での被害が大きく、今でも優秀な人材が不足していた為に、レオナ姫がこき使う為に残した…という噂もあったりする。

その噂を知っているかは定かではないが、レオナ姫からの直属の命令でポップが動くことは多く、なかなかに忙しい日々をポップは送っていた。その合間を縫ってダイの勉強を見てやったり、ちょっかい出して遊んだりして忙しい中でもそれなりに楽しく過ごしてはいたのだが。

「よ。ダイ、勉強はかどってるかぁ?」
軽い口調のポップとは裏腹な、重苦しいダイの返事。
「…う~ん。あんまり…」
分厚い本と睨めっこしていたのだろう、本の影から覗くダイの困った顔がおかしくて、ポップは吹き出した。
「笑うなよぉ。これでも一生懸命やってんだから~!」
「わりぃわりぃ。でもよーおまえ自分からその課題やるって言い出したくせに全然出来ねぇじゃね~か。だからまだ早いって言ったのに…」
「だって、おれだって字も随分読めるようになったし! ポップが昔先生に教わったやつだって言ってたから、やってみたくなったんだよ!」
「ああ、それでか…。でもそれ、おれが十五歳の時に教わったやつだし、お前にはまだ早いよ」
「おれだってもうすぐ十五だよ!」
「えっ! あれっ、そうだっけ?」

素でびっくりして聞き返すポップに、ダイがちょっと不満そうに反論した。

「何言ってんの? もう戻ってきてから半年以上も経つんだよ~?」
「そうだった。お前、あんまり変わらないからつい忘れる…」
「何だよそれっ! ちゃんと背も伸びてるってばっ!」
「そうか…?」
「ポップぅぅ~!」
真剣に心配げな顔で言うポップにダイがむくれる。ダイをからかっているのも確かなのだが、何故かポップにはダイをあの頃のままの十二歳の少年と勘違いする事がよくあった。たった3つしか歳の違わない自分の事は、あの頃に比べ随分大人になったように感じるのに、ダイの事となると無意識に子供だと思ってしまう。
「悪かったって! 冗談だよ」
「いーや。本気の目だった。おれは傷ついたぞ」
機嫌の直らないダイにポップは提案する。
「ちょうどメシ時だし、これから街まで降りてうまいもん食いにいこうぜ! おごってやっから!」
「ほんと? 行く行く!」
(やっぱりまだガキだ…。)
内心そう思いながら、たちまち機嫌の直ったダイと共にポップはルーラで街へと向かった。課題はもちろん放り出して。


 街を歩きながら何を食べようか話していると、教会から鐘の音が響きだした。
何事かと目をやると、教会の扉が開き中から純白のドレスを着た花嫁と正装した花婿が出てきた。皆に祝福を受けながら笑顔で歩いてくる。今しがた結婚式を終えたばかりなのだろう、にっこりと微笑む二人の笑顔はとても幸せそうだった。

「結婚式かぁ…」
「ポップ、今何考えてるか当ててやろっか? どうせマァムのドレス姿は綺麗だろうなぁとかだろ?」
「…うるせっ! いーだろ別に。お前こそ姫さんの花嫁姿でも想像してんじゃねーのかよ?」
照れ隠しにポップが絡む。
「いや別に? 花嫁姿じゃなくたって、レオナはいつも綺麗だしね」
微塵も照れることなく、さらりととんでもないことを言い放つ。
ダイは、そういうところは昔から妙にドライで、時々、こいつほんとにレオナの事が好きなのか? と疑いたくなる時がある。大事に思っているのは確かだろうけど。
「おまえって、ほんとドライだな…。てか、余裕ってやつ? 愛されてるもんねぇ。ダイくんは! いいよなぁ~」
「何だよ、それ。変な奴。それを言ったらポップも愛されてるだろ。メルルにもマァムにも」

「な、何でそうなるんだよ?」
またとんでもねーこと言い出したよこいつ。がっくりと脱力するポップにダイが畳み掛けるように囁く。
「…結局、どうすんの?」
「……これ以上、どうすりゃいいかわかんねぇよ…」
「だったらさ、プロポーズしちゃえば? マァムに」
「はぁ!? なんでそーなるんだ? おれはマァムの返事を待ってる状態なんだぞ!?」
「でもさ、好きだって言っただけなんだろ? どうしたいかちゃんと言わないとマァムも返事しづらいかもしれないしさ。言っちゃえば?」
「…ははーん。…分かったぞ。お前それ、姫さんの受け売りだろ!」

ダイの口からプロポーズなどという言葉がすらっと出てくるはずが無い。どう考えてもあの姫さんの入れ知恵に違いない。進展のないおれとマァムの関係をネタに、暇つぶしでもするつもりか。
レオナが純粋な親切心から言ったかもしれない…という可能性はポップの中では完全に排除されていた。

「バレたか。でもさ、おれもそう思う」
「あーうるさい、うるさい! 姫さんのスパイの言う事なんぞ耳を貸さん」
「スパイって…そんなんじゃないってばー。おれ思うんだ。マァムはさ、優しいから、メルルの気持ちを知ってて自分からポップのところに来たり出来ないんじゃないかなぁ。マァムは自分の気持を優先するの、苦手そうだしね」
「…意外だ。おまえ、ダイのくせに難しい事考えてるな」
「何だよその言い方はぁ…。おれだってちゃんと勉強してるし! もう子供じゃないぞ」
「まだ、ちびのままだけどな」
「またそれを言う? おれが気にしてるの知ってるくせに…。全く、そんな天邪鬼な事ばかり言ってたら、マァムにも愛想つかされるぞ! せっかく人が心配してやってるのに…」
「冗談だってば、怒るなよ。ちゃんと伸びてるって!」
「まったく、今に追い抜かしてやるからな!」
「それは、困る。身長まで負けたら、お前に勝てるもんが無くなっちまうだろ!」
思わず口をついて出たポップの言葉に、ダイの動きが一瞬止まる。
ポップは一瞬しまったと思った。本音が出てしまったのだ。ちらっと盗み見たダイはちょっと考え込むような顔をしていたが、ポツリと口を開いた。
「…あるよ、おれが敵わない事」
「…何だ?」
「…逃げ足」
「オ・マ・エなぁ! そこは魔法って答えるとこだろがぁ! そういや勉強もだ!」
「冗談だよっ! さっきのお返し! 苦しいってばポップぅ!」
ダイの首に手を掛けて締め付けながら、ポップは気付く。
「ダイ…ホントに背、大きくなってるな」
「そうだよ。ちゃんと伸びてんの! いつまでも、ちびじゃないよ。だからさ、もう大丈夫だよ」
「ダイ…?」
「おれのことはもう、大丈夫だから。今まで心配ばかりさせて、ごめんな」
ダイはにっこりと笑った。少しだけ寂しそうな目で。
そんな風に笑うダイはとても大人びて見える。
言葉に出さなくても、ポップには分かった。ダイは自分の事よりポップ自身の事を大事にして欲しいと言っているのだ。あの大戦の時、手を離してしまった事を、ダイの気持ちに気付かなかった事を、今でもポップが悔やんでいるのをダイは知っているから。

「別に、おれが好きで心配してんだから、いいじゃねぇか」
そう言って俯きながら、なんだかいろんな気持ちがポップの中に沸き起こった。
(ダイは強くて、本気になったら誰も敵わないけど。魔法だって本当はおれも、もう敵わないけれど。
でも、小さくて。守らなければいけないガキで。そう思っていた。…おれはずっと、そう思っていたかったのかもしれない…。)

「けど…そうだよな。いつまでもガキじゃない。分かってるけど…。…けどなぁ! お前がたとえ王様になったって、おれが兄貴分だってこと忘れんなよ! なんかあったらいつでも言え。いつだって、おれには甘えてりゃいいんだよ」
「ありがとう…ポップ」(…王様には、ならないかもしれないけど…。)
どうしてダイがこんなにもポップとマァムの事に口を出したのか、その本当の理由をポップはずっとあとになってから知る事になる。それはまた別の物語だけれど。

 時間は知らないうちに、流れていく。
曖昧な居心地の良さに浸っていたくても、いつまでも同じ所にはいられないのだ。
少しづつ動き出した時間の中をポップは歩き出そうとしていた。


一人になって、ポップはこれからのことを考えていた。
(マァムには大戦のどさくさで告白したきり、そういう話はしていない。
メルルとも一定の距離を保ったままだ。周りからは、まるでおれがどっちつかずのような扱いを受ける事があったが、おれの気持ちは変わっていない。
出会った時から、ずっと。でも、メルルの好意を知りながら、ハッキリと拒絶できないでいる事も本当だった。
…世界が平和になり、ダイも戻ってきた。ハッキリさせるなら、今しかない。)

ダイの後押しのせいか、おれはマァムに改めて気持ちを伝える決心がつきつつあった。
「そろそろおれもどうするか決めないとな。仕事にしても、一生城仕えなんて性に合わないことだし」
独り言を呟きながらポップはその日、眠りについた。
そうは言っても、ダイを探すべくパプニカに残り、復興にも何かと手を貸していたポップは、そう簡単に手掛けている仕事を放り出して、どこへなりと行く訳にはいかないのだが…。翌日、仕事をひとつ片付け、王宮の廊下を歩いていたポップに城に仕える若い兵士が声を掛ける。レオナの警護を担当している一人だ。


「あ、ポップ様、レオナ王女様が至急、執務室まで来て欲しいと…」
ポップは、一部の者からなんと、様付けで呼ばれている。最初は驚いていたポップも今では慣れて、それなりにお偉いさんっぽくなっていた。
「姫さんが? …分かった。すぐ行くよ」
(なんか、嫌な予感がするけど…)
軽くノックをして、中からの返事を確認するとポップはドアを開けた。
「何か、用か? おれ、結構忙しいんだけど」
余計な用事を言いつけられないよう、さりげなく予防線を張りながら、ぞんざいにレオナに尋ねる。
「なぁに? その言い方。いいのかしらぁ、そんな言い方しちゃって。後悔するわよぉ?」
「…だからぁ、何なんだよ?」
あからさまに嫌な顔になる。ポップはレオナのこういう所が苦手なのだ。
何を言われるか想像できない所が怖い。
「可愛くないわねぇ。ま、いいわ。実は今日、ロモスの王様から書簡が届いてね。一通り呪文が使える魔法使いを一週間ほど派遣してくれないかって頼まれてるの。ほら、こないだの大雨でがけ崩れがあって、補修工事が必要なんですって。だから、君に行ってもらいたいの。ホントは2~3人必要だって言われてるんだけど、君なら一人で充分よね? 出発は三日後。それまでに今抱えてる仕事、キリのいいとこまでやっといてね」
「えっ! マジで言ってんの? 無理だって!! 三日じゃ…」
「だから、キリのいいとこまででいいって言ってんでしょ! 君の居ない間はあたしが指示出しとくから。ロモスでの仕事中はロモス城に滞在する事になってるの。仕事が終わったら自由時間にしていいわ。買い物するなり昼寝するなり、好きな子に会いに行くなり、頑張って早く終わらせて自由になさいな」
「!! う~~…。それってスパイがなんか言ってたわけ?」
「疑り深い男っていやぁね。違うわよ。ただ、そろそろ会いたいんじゃないかなって思っただけ。ポップ君は顔にすぐ出るんだから悩んでるのバレバレよ。忙しくてパプニカにずっと缶詰だったでしょ。ちゃんと感謝してるんだから、あたしだって」
「姫さん…」
「まぁロモスでも必死で働かないと、マァムに会う時間も無いかもだけどね!」
「…厳しいよなぁ、姫さんは。…でもありがとよ。ロモスに行く用事が出来ただけでも、腹くくるいい機会かもしれねぇ」
「そうよ、いつまでも悩んでたって結果は変わらない。当たって砕けてきなさいよ。男らしくね!」
「…砕ける事が前提で話すのやめてくれよ! 縁起悪いだろうがぁっ!」
「ほほほ。あたしったらつい。やぁねぇ」
「くそ~人事だと思って楽しみやがって…」
レオナの親切だかおせっかいだか分からない膳立てで、ポップはロモスに派遣される事となった。



それから怒涛のように忙しい三日間を経てポップはロモスへと出発した。
出発といってもルーラなら一瞬だ。その一瞬の距離が、今まで怖くて来られなかった。
マァムに断られるのが怖くて、自分から返事を急かす事もポップはしなかった。

ロモスの王様に謁見するのは昼過ぎ。まだだいぶ時間がある。それまでにマァムに言ってしまおう。時間を置くとまた言えなくなる気がするから。逃げそうになる自分を叱咤しつつ、ポップはマァムの居るネイル村へと向かった。


村で忙しく薪割りをこなすマァムにポップはそっと声を掛けた。
「よ。久しぶりだな。マァム」
「えっ!? ポップ! 驚いたわ、いつのまに来てたの? 全然気付かなかった!!」
「おう。近くまでルーラで来て、ここまではトベルーラでな。村のみんなを驚かせちゃいけねぇと思ってさ」
「そう。確かにルーラに慣れてないと、あの音はびっくりしちゃうわよね。
本当に久しぶりね、ポップ。…なんだかやつれたんじゃない? 大丈夫なの?」
「そ、そうか? 大丈夫だって。ちょっと最近食欲がないだけだよ」
実はポップは、マァムに気持を伝える事を考えると、心配で胃が痛くなり、ここ数日あまり食事が喉を通らなくなっていたのだ…。
大魔道士を名乗り、城ではポップ様と呼ばれているというのに、マァムが絡むとどうしても小心者になってしまうポップである。
「駄目よ、ちゃんと食べなきゃ。少し待って、すぐ用意するわ」
「いや、いいんだマァム。このあと行かなきゃならねぇ所もあるしな。今日は、ちょっとお前に話があってさ、先に寄ったんだ。ちょっと出れるか?」
「え? どこか行くの? じゃあ、武闘着に着替えたほうがいいかしら?」
「おいおい…別に戦いに行くわけじゃねぇって! そのままでいいから!」
「そぉ? 一体、どこへ行くの?」
「まぁ、それは着いてのお楽しみって事で。じゃあ、行くぜ! つかまってろよ」
といいつつ、ちゃっかりマァムの腰に手を回して、ポップはルーラを唱えた。
ルーラとは本当に便利な呪文である…。


盛大な着地音を轟かせて到着した場所は、ネイル村のそばの魔の森。マァムとポップが初めて出会った場所であり、旅の途中で別れた場所。マァムに想いを伝えようと思った最初の場所で、ポップにとってはことさら思い出深い場所である。
「ポップ、どうしてここに…?」
「いきなり連れて来ちまってすまねぇ。今日は…さ、お前に話したい事が、あって…」
緊張の為に途切れがちになるポップの口調に、何かいつもとは違う雰囲気を感じ取ったのか、マァムの心臓の鼓動が少しづつ早くなっていく。
「おれな、マァムの気持ちがはっきりするまで、待とうって思ってた。でもな、ダイに言われて気付いたんだ。今のままじゃいけないって。マァムの気持ちを急かすことになるかもしれねぇけど…、もう一度おれの気持ちをきちんと言っときたくて。あんな戦いの最中の…告白じゃなくって、さ」
「ポ、ポップ…」
マァムがほんの少しだけ、後ずさった。心臓がドキドキして、聞くのが怖いような気持ちになる。
「マァム…。おれ、お前の事が…好きだ。どうしようもなく好きなんだ。おれがお前に返事を急かさなかったのは、お前の気持ちを大事にしたかっただけじゃない。お前に嫌われたくなかったし、ハッキリ断られるのが怖かったからだって気付いたんだ。このままじゃ駄目だって。相変わらず、お前の事となるとおれはヘタレだけど、でも、お前を好きな気持ちは誰にも負けない自信がある。だから、おれと、結婚してくれないか?」
「!」
「…まだ、付き合ってもいねぇのに、何言い出すんだって思うかもしれねぇけど、もちろんすぐにって訳じゃないけど、おれはそういう気持ちでいるってことを言っときたくて。ずっとそばに居て欲しいんだ。おれの気持ちはこの先何年経っても変わらない。それに気付いた。だから、もう言っちまおうと思った。
マァム、お前はどう思ってる? あの大戦から二年半、お前の気持ち、少しは変わったか…?」
「わ、私…」
突然のプロポーズに混乱しどうしていいか分からない様子のマァムに、ポップは笑う。
「ハハ…そりゃ、びっくりするよな。おれは言う気で来てるけど、マァムにしたらいきなりすぎるよな。…でもおれ本気だからさ。お前を誰にも渡したくないから、ちょっとぐらいフライング気味でも許してくれよな」
「ポップ、なんだか、いつもと違うわね…。本当にポップ…?」
「正真正銘おれだっつーの!おれだってたまにはマジになるって!」
「そ、そうよね、ごめんなさい…」
なんだか最後にはとんちんかんな会話をしつつも、ポップのプロポーズは無事に終わった。
「…返事、待ってるから。それと…これ」
手渡そうと思ったが、手が震えているのに気づいてぽいっと投げた。
(おれ、こんな緊張してたんだな。震えてたの気づかれてないよな、情けねぇ…。)
ぽんと無造作にマァムの胸に放られた小さな箱。可愛らしいリボンが掛けてある。
ポップが忙しい合間を縫って、探してきた大切なもの。
「サイズ、合ってると思うけど。もしデカかっても勘弁な」
そっと開けてみると、そこにはまばゆい輝きを放つ美しいリングが収まっていた。
「これって…」
「婚約指輪! プロポーズなんだから当然だろ? すっげぇいいの買ったんだから、気に入らないとか言うなよな」
「すごく綺麗…。でも私が付けてたら、壊してしまいそう…」
本気でそんな事を言うマァムに脱力しながらもポップが軽口をたたく。
「おまえ、この平和な世の中で何殴る気だよ。まさかおれか?!」
「なによ、まるで私がいつも殴ってるみたいに…」
「いや、殴ってるだろ。結構な割合で。…とにかく。おれ、これから一週間くらいロモス城にいるから。また時間見つけて会いに来るよ。そん時、返事聞かしてくれたら嬉しいけど、まぁおれがパプニカに戻るまでには考えといてくれよ」
「ポップ…分かったわ。それまでに、気持ちの整理、つけておくわ」


そう言ってポップとマァムが話したのが6日前、結局ポップはマァムに会いに行く事が出来ないでいた。それはポップのヘタレのせいではなく、膨大な仕事量のせいだった。あまりの魔法力使用で、その日の作業が終わる頃にはポップの魔法力はカラになってしまっていた。そうなると、ルーラも出来ないほどへとへとの状態である。
「くっそ~何が魔法使い2~3人の仕事だよ…。5人でも足りねぇっつーの。
姫さんに騙されたぁ…。…マァム、どうしてるかな…」
その時、ロモスの兵士がポップに声を掛けた。
「ポップさま、お客様がいらしていますよ」
「えっ?まさか…」
いつまでも顔を見せないポップを心配したマァムが城まで訪ねて来てくれたのだ。

「マァム…ごめんな。会いに行くとか言っときながら…」
「ほんとよ。でも随分大変そうね。大丈夫なの?」
「おう。ちょっとばかしキツイけど、作業はなんとかなりそうだ。なぁマァム、来てくれたって事は少しは脈があるって思っちまっていいのかい…?」
「私ね、あれからいろんな事考えたわ。ポップに気持ちを打ち明けられてから…。最初はとても戸惑ったけど、大戦が終わって、ダイも見つかって…ようやく安心して暮らせるようになって…少しづつ自分の気持ちが分かってきたの」
二人はゆっくりと城下の小道を歩きながら話していた。歩いているうちに町の中の小さな噴水のある広場のような場所に出た。簡単ながらベンチがいくつかあり、住民たちの憩いの場になっているようだ。
「ロモスも随分復興したな…。ちょっと座ろうぜ」
そう言いながら、ベンチをササッと手で払うとそこにマァムを促す。
「なぁに? 随分優しいのね」
「おれはいつも優しいっつーの。なんならおれの膝に座ってくれてもいいんだけど?」
「もう! いっつもスケベな事ばっかり言うんだから」
ポップの照れ隠しの軽口に怒りつつも、マァムの表情は穏やかだ。
「最初に会った時のこと、今でもよく覚えてるわ。ポップはどう?」
「もちろん覚えてるさ。なんておっかねぇ女だろうってな」
「ちょっと! ひどい言われようね。でも私もポップの事、なんて情けない男かしらって思ってたからお互い様ね」
「それに関しちゃ、反論できねぇなぁ…。だけど…今もまだそう思われてるわけじゃないよな…?」
ポップが真剣なまなざしでマァムを見つめる。
「もちろん、情けないなんて思っていないわ。でも…」
「で、でも…?」
雲行きの怪しくなってきた会話にポップは焦りながらも思わず先を促してしまう。
「私にとってポップは…やっぱりどこか頼りなくて心配で…」
「な、なんでだよ~~っ! おれってまだそのポジションから動いてねぇの…?」
ガクッと肩を落として落ち込むポップに慌ててマァムが訂正する。
「ち、違うの! そうじゃなくて、私はポップのこと、本当はすごく頼りにしてるのよ。いつの間にか、戦いの場でも気持ちの上でも、ポップに頼ってた…。でも弟みたいに心配な部分もあって…。私、ポップのそういうところ、嫌いじゃないの」
「マァム…けど、お前の好きなタイプってヒュンケルみたいにめっぽう強くて美形なオトコマエでおれなんかとは全然違うんじゃ…?」
「もう! いつもそうやって決め付けるんだから! 顔のいい人が好きなんて、私言った覚えないんだからね! 
…そんな風に無理して誰かの真似なんかしなくたっていいの。私の前でだけは手の掛かる所も残していて欲しいって思うの…」
「マァム…? それって、それってもしかして、おれのこと…?」
真っ赤になってコクリとうなずくマァムの手を思わず握り締めるポップ。
「ほ、ホントに!? じゃあ、おれのそばに居てくれるんだな? 結婚してくれるってことだよな?!」
「…ポップがそう望んでくれるなら、ずっとそばに居るわ。こんな私でいいのなら…」
「いいもなにも…お前じゃないと駄目なんだ。おれには勿体無いぐらい、いい女だよ」
ポップはマァムの手を引き寄せ、抱き締めた。そういうことにはまったく経験が無く、うぶなマァムは驚き、体を硬直させている。普段は勝気なマァムが見せる、恥ずかしそうな困ったような顔が、ポップはとても可愛いと思った。
「ポ、ポップ」
「そんなにびっくりしないでくれよ。何もしないって。やっぱりおれじゃ嫌だ、なんて言い出さないでくれよ?」
「そ、そんな事、言わないわ。でも、なんだか恥ずかしくて、どうしていいか…」
「マァム、ずっとずっと好きだった。二度と離さないから、覚悟しといてくれよな」
「ポップ…」
「指輪、持ってるか?」
「ええ、ここにあるわ。なんだかはめるのが勿体無くて…」
「はめなきゃ意味ないだろ。大丈夫、頑丈な金属のやつ選んだから。…これで駄目だったら、オリハルコンでも探してきてやるよ」
「ちょっと、ポップ~?」
「おっと、冗談だって!」
「まったく、すぐ人を怪力扱いしてっ!」
「まぁまぁ。左手、貸して」
マァムの左手の薬指に、ポップがリングをはめる。まるで、結婚の儀式さながらに。
「似合うぜ、マァム」
「本当? ありがとう、ポップ。指輪なんてはめるの初めてだわ」
優しく微笑むマァムの笑顔にポップは見とれた。いつもからかってばかりいるけど、マァムは本当はとても綺麗で、旅をしている間もポップはよく見とれていたものだ。
「この外見で、怪力武闘家って…ある意味詐欺だよな…」
ぼそっとポップがもらした一言にリングを見つめていたマァムの視線がポップに移る。
「それ、どういう意味…?」
「あっ、うそうそ! ケツがでかいとかいう意味じゃなくてっ!」
「ポップ! よっぽど殴られたいみたいね!」

マァムが両手をぐっと固めて拳を構える。マァムのパンチはお遊びでも相当重いので、普段なら命がけで避ける必要があるが、今のポップはなんだか一発くらいもらってもいいかな、と思うくらい幸せだった。
この幸せが夢ではないと、現実のものだと確信したいと思ったから、多少の痛みぐらい…と覚悟を決める。
しかし、その覚悟は不要に終わる。
マァムはすっと拳を開くと、ポップの服の裾をきゅっと掴んだ。
「やっぱり今日は、殴らないでおくね。せっかくポップが指輪をはめてくれたんだもの」
そういってふんわりと微笑むマァムに、ポップは体がかっと熱くなるのを感じた。
みるみる赤くなる顔を手でおおって隠しながら、ポップがぼそりと呟く。
「おまえ、それ、反則だろ…」
真っ赤になってそっぽを向いてしまったポップを不思議に思いながら、マァムは心があったかい気持ちで満たされている事に気づいた。
ポップと居ると、心配してハラハラしたり、からかわれて怒ったり、触れられてドキドキしたり、心がくるくる変わってしまう。まるで自分じゃないようで、どうしていいか戸惑うこともあったけれど、それでも心を決めることが出来たのはポップのそばに居る時に一番強く感じるのが、安心感だったから。ポップが望んでくれるなら、この人のそばにずっとずっと居たい。心からそう思うことが出来たから。
掴んだ手に少しだけ力を込めて、マァムがそっと呟いた。
「ずっとそばに居てね、ポップ」
「…当たり前だ。嫌って言っても今さら離すかよ。なぁ、マァム?」
「え?」
ぱっと顔を上げた瞬間、ポップの顔がすぐそばにあって。ほんの一瞬だけ唇が触れた。
「!!!!!!」
びっくりして固まるマァムをよそに、ポップはにやにやしながら言い放つ。
「昔に貰いそびれた前借り、ようやくもらえたな」
「い、いきなりっ…!」
びっくりするでしょうがぁぁ!! という叫びと共に鋭いボディブローがポップの体にクリティカルヒットした。
「ぐはぁっ…!! マ、マァムさん、至近距離で…ほ、本気のパンチはちょっと…」
いてて、と腹を押さえながらもまだポップはにやにやしたままだ。幸せすぎて、痛みも脳まで届かないのかもしれない。
「もうっ! ポップが悪いんでしょ!! い、いきなりあんなっ…!」
今度はマァムが真っ赤になって抗議する。
「ごめんごめん。じゃあ今度はいきなりじゃなく、ちゃんと言ってからすっから」
「そっ、そういう、問題じゃ…!」
「じゃあ、やっぱりいきなりする」
「もう!! ポップったら…!!」


幸せそうにじゃれあうポップとマァムの姿がそこにあった。
今までと同じようでいて、けれど確実に違うこれからの時間を二人は一緒に歩き出そうとしていた。
                                    

 終

最後まで読んで下さってありがとうございました!!
もし少しでも楽しんでいただけたなら、拍手ボタンをぽちっと押していただけたら感無量です!
よろしくお願いいたします!
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